美容師になるまで

今回は,美容師になるまでの過程等についてお話します。
・どうすれば美容師になれるのか?
・美容師試験に合格した後にやるべき手続きは何か?
・美容師試験に合格しても美容師になれないことがある?
以上の疑問を解決できます。

本ブログの情報提供者

本ブログの管理人は,熊本県弁護士会所属の弁護士です。

弁護士のほかには,外国人実習雇用士という資格試験に令和2年に合格しました。
また,理容学校にて関係法規を2年教え,現在は美容学校にて関係法規の科目を担当しています。
美容師試験の勉強のために本ブログを読むかたは「美容師法のポイント」をまずお読みください。
このブログ自体を初めて読まれる方は時間があれば「本ブログの説明」も併せてお読みください。

美容師になるまでの過程

美容師として美容業を行えるようになるまでには以下の経緯を経ることになります。

①養成施設への入学
②美容師試験受験
③美容師試験合格
④合格証書の受領並びに名簿登録の申請
⑤名簿登録完了

では順を追って見ていきましょう。

そもそも美容師とは…

美容師法2条では、美容師とは、美容を業とする者をいうと規定されています。
また、美容とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう、とされています。

第1条 この法律は、美容師の資格を定めるとともに、美容の業務が適正に行われるように規律し、もつて公衆衛生の向上に資することを目的とする。
第2条 1項 「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
 2項 「美容師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて美容を業とする者をいう。
 3項 この法律で「美容所」とは、美容の業を行うために設けられた施設をいう。

美容業は、美容師しかできない独占業務です。
ちなみに「結髪」は「けっぱつ」と読みます。

この第2条の第1項は試験でよく聞かれますので、是非押さえておきましょう!

美容師になるまでの経緯についてはすでに書いたとおりですが、美容業をするためには、美容師試験に合格するだけでなく、その後免許を受ける必要があります
そのため、合格すれば美容業をしても大丈夫ということではありません
必ず「免許」を受ける必要があります。
この「免許」は、厚生労働大臣から受けます。

美容師法では、厚生労働大臣都道府県知事(又は保健所設置都市市長)という役職の人が出てきます。
ここが非常に厄介です。試験でもここをひっかけに使った問題がよく使われます。
ぜひ気をつけてください(過去問を解いてたくさん間違えて、どこで「ひっかけ」ようとしてくるのかを把握しましょう)。

ちなみに、「免許」と「免許証」は意味が異なります。
「免許」とは、法律上原則禁止されている行為(例:自動車の運転)について、ある一定の要件をクリアした人はやっていいですよ、といって行政庁(例:自動車であれば各県の公安委員会)が禁止を免れさせ、許すことをいいます。
これに対し、「免許証」とは、「免許」を受けたことを証明するための書類を指します。

養成施設→美容師試験

美容師を目指す人は、必ず都道府県知事(又は保健所設置都市市長)の指定した養成施設で勉強をしなければなりません。
この養成施設で美容業を行うにあたっての必要な知識及び技能を習得することになります。
養成施設はいわゆる美容学校というやつです。

この美容学校において、必要な知識及び技能を習得した者が、美容師試験の受験資格を取得します。
よく美容学校では「学校を卒業できなかったら受験できない」との情報が流れていると思いますが、それは誤った情報です。
受験資格は、「養成施設を卒業した者」ではなく、養成施設にて必要な知識及び技能を習得した者です、お間違えの無いように。

続いて美容師試験の話です。

美容師試験を実施する機関は、厚生労働大臣が指定した試験研修センターです(公益財団法人理容師美容師試験研修センター、という長い正式名称があるようです)。

試験科目は、筆記試験と実技試験の2科目です。
残念ながら片方に落ちてしまった人であっても、次回受ける際に申請をすれば合格したほうの科目は免除となります。

試験に合格したら・・・その後の手続き

無事、美容師試験に合格すれば晴れて美容師!さっそくお客さんの髪を切れる!とならないことはすでにお話した通りです。
美容師試験に合格したとしても、その後免許を受けなければなりません。

美容師試験に合格すると、厚生労働大臣が指定した試験研修センターから合格したことを称する証書が交付されます。
その後、厚生労働大臣が指定した試験研修センターに免許の申請(名簿登録の申請)をします。
この申請の際に記載すべき事項について、次の項目で説明します。

免許申請書には、①氏名、②生年月日、③性別、④本籍地、を記載します。
これがそのまま登録されるので、この①から④の事項に変更が生じた場合には、変更届出をする必要があります。
登録して働いた後、結婚・離婚した場合には、①④に変更が生じる可能性が高いので、注意してください。

この届出の際には、①戸籍謄本と②精神の機能の障害に関する医師の診断書を一緒に提出します。

ちなみに本籍地というのは、戸籍に記載する時に「ここを本籍地とする!」といって設定した場所です。
おおよその人は出生時に親が同じ本籍地になるよう届出をしてくれていると思います。
その後,結婚などで本籍地を自分で設定した方もいるかもしれませんね。
住所地というのは、現住所のことを指します。今まさに住んでいる場所の住所が、住所地です。

試験に合格したのに・・・免許欠格事由

美容師試験に合格し、免許の申請を行っても、免許がなされない(名簿登録がされない)人がいます。
それが免許欠格事由の該当者です。

免許欠格事由は、
心身の障害により美容師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定める者
無免許で美容を業とした
業務停止後、その期間内に美容を業としたため、免許の取消しを受けた者
の3つです。
全てとても重要ですので、太字のところはしっかりと覚えておきましょう。

さきほど、免許申請(名簿登録申請)の際に、精神の機能の障害に関する医師の診断書を提出するとのことでしたね。
これは、免許欠格事由①の心身の障害の有無を確認するために必要なものです。
精神の機能障害に関する医師の診断書の内容から、美容業を適切に行えないだろうと判断されれば、免許が与えられません。

また免許を受けていないのに美容業を行ったことがある人は、美容師法のルールを守れない可能性が高い人だと考えられます。
そのため,本当に美容師試験に受かったとしても、免許欠格事由②に該当し、免許を受けることができない可能性があります。

そして、最後の免許欠格事由③について説明します。
美容師には、美容業を行う上でのルールがあり、そのルールを破ると業務停止処分を受けます。
(美容師の罰について詳しくは「美容師がルール違反をしたら」でも説明しています)
この業務停止処分というものは、「○ヶ月美容業をやってはだめですよ。」というものです。
この業務停止処分は、都道府県知事(又は保健所設置都市市長)が行います。
この「○ヶ月は美容業をやってはだめですよ。」という処分を受けた人の中には、ちゃんと反省して美容業をしない人もいる一方で、生活のためにどうしても美容業をやってしまう人がいます。
そういった業務停止処分に違反した人にはさらなる制裁(ペナルティ)として、免許取消処分という処分がなされることがあります。
この免許取消処分というものは、美容師としての資格剥奪にあたるので、その人は無免許者と同じ扱いとなります。
ちなみに、この免許取消処分は、厚生労働大臣が行います。
この免許取消処分を受けた人であっても,再度美容師試験に合格すれば,改めて美容師になるチャンスがあります。
しかし,1度ならず2度までもルール違反をした人が美容師になるのは社会的に望ましくない場合があります。
そのため,業務停止期間中に業務を行い,免許取消処分を受けた人は,免許欠格事由として免許を受けることができない可能性が残されているわけです。

名簿に登録されたら・・・

免許を受け,名簿に登録が済んだら,晴れて美容師として仕事をすることができます。
思う存分,お客さんをきれいにしてあげてください。
ただ、美容師になった後、守らなければならないルールがたくさんあります。

最後に

いかがだったでしょうか。
美容師になるための道のりご理解いただけたでしょうか。
美容師試験でも問われますので、ポイント毎に押さえていきましょう。

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この記事を書いた人

宮田総合法律事務所所属弁護士(熊本県弁護士会・59900)
熊本生まれ。出水南→熊大附属→熊本→熊本(法・法科)→72期・熊本。
平成30年司法試験合格,平成31年・令和元年司法修習
令和2年1月熊本県弁護士会登録、同年5月第2回外国人実習雇用士試験合格
九州美容専門学校にて関係法規担当(令和2年~)

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