美容室を開業するには?

前回までは主に美容師にまつわる情報を説明してきました。
今回からは、美容室のオーナー=開設者について説明していきます。
この記事では
・美容室を建てるために必要なことってなに?
・開設前に届け出るべき事項は?
・開設前の検査って何するの?
これらの疑問にお答えしています。

本ブログの情報提供者

本ブログの管理人は,熊本県弁護士会所属の弁護士です。


理容学校にて関係法規を2年教え,現在は美容学校にて関係法規の科目を担当しています。
美容師試験の勉強のために本ブログを読むかたは「美容師法のポイント」をまずお読みください。

美容室開設までの道のり

美容室を開店・開業すること,これを開設といいます。
聞きなれない言葉だと思いますが,今後美容室の開店・開業=開設とイメージしてください。
そしてこの開設をする人=開設者です。

美容師は,「美容師になるまで」で解説したように,学校を出て,試験を受けて,名簿登録して…と段階がありましたね。
これに対し,開設者は、資格不要で,誰でも,なることができます
たまにひっかけで,開設者は美容師(又は管理美容師)でなければなれない,みたいな選択肢が出てきますので気を付けてください。

美容室を開設したい人は,まず都道府県知事(又は保健所設置都市市長)に対して開設届を出さなければなりません。
この開設届は同時に,検査確認の申し出を兼ねています
そのため,開設届をした人の美容室には検査確認がなされます。
この検査確認で,美容室が備えていなければならない衛生基準を満たしているかチェックされます。
この衛生基準がなんであるかは後ほど説明します。
検査確認をクリアすれば,美容室をオープンし,美容業を行う場を提供することができます。
①開設届②検査確認は,開設者が開設前に行わなければならないもの(義務)ですので,美容師名簿登録後,すぐに一人で独立する人はしっかりと覚えておきましょう。

開設前の義務ー届出

開設者の義務1つ目は,開設届です。
開設届ってのは、「美容室作るよー!」って行政に教えることです。

届出事項としてまず覚えてもらいたいのが上記画像にある7項目です。
この7項目は,変更の届出をしなければならない項目でもあります(詳しくは,「美容室を開設した後は…」で説明します)。
「7つも覚えるのは大変だ」と思うかもしれませんが,よく画像を見てください。
結局届け出るのは,(A)美容所/開設者/美容師/管理美容師の名前と住所,(B)美容師については、登録番号と、伝染性の疾病があれば医師の診断書,(C)美容所の構造及び設備の概要の3つです。
ざっくり、名前と住所、美容師は登録番号と病気を届け出ればOKと覚えておきましょう。
これに加えて(D)開設予定年月日も届け出る事項となっていますが、かなり細かいのでまずは上記ABCを覚えましょう。

ちなみに,なぜ美容師が伝染性の疾病にかかっている場合,その旨を報告しなければならないのでしょうか。
美容師法は,利用者の公衆衛生の向上(=健康や身体,生命の安全を守るため)を目的とした法律でしたよね。
そして美容師が伝染性の疾病にかかっている場合には,その美容師に対して業務停止命令が出されることもある,という話でしたね(この点については「美容師の義務」を参照してください)。
伝染性の疾病にかかっている美容師が,今,どこの美容室で働いているかを,行政側に知らせ,適切な措置を行政がとれるようにしておくことで,美容師法の目的が達成されます。
そのため,開設者は,自分のところで働いている美容師が伝染性の疾病にかかっている場合にはその旨届け出なければなりません。

開設届の届け出先は,都道府県知事(又は保健所設置都市市長)です。
そして,開設届義務に違反して,美容所を利用した場合には30万円以下の罰金が予定されています。

開設前の義務ー検査確認

開設者の義務、2つめは、検査確認義務です。
検査確認ってのは、開設しようとしている美容室が、今後の営業の中で衛生措置を適切に行える状態になっているかを確認する作業です。
ちなみに、開業届をした時点で、検査確認の申請も同時にしたことになっているので、検査確認申請を単独で行う必要はありません。

美容室において衛生措置を適切に行うためのチェック項目としては
①清潔さを保てるか
②消毒設備を設備できるか
③採光・照明・換気を十分にすることができるか
があります(この辺は「美容室を開設した後は…」で詳しく説明します)。
検査確認では、このチェック項目に従った検査がなされ、問題がなければ晴れて美容室をオープンさせることができます。

この検査確認をすることなく美容室を使用した場合や検査確認で問題有りとされたのに美容室を使用した場合には、30万円以下の罰金が予定されています。

最後に

開設者のところになって急に難しい用語が出てくるので、この項目で一気にやる気をなくす人が多いです。
授業でもこのあたりはみんな寝てます。
開設者は、開設前の義務と開設後の義務がありますので、まずはそこを押さえましょう。

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この記事を書いた人

宮田総合法律事務所所属弁護士(熊本県弁護士会・59900)
熊本生まれ。出水南→熊大附属→熊本→熊本(法・法科)→72期・熊本。
平成30年司法試験合格,平成31年・令和元年司法修習
令和2年1月熊本県弁護士会登録、同年5月第2回外国人実習雇用士試験合格
九州美容専門学校にて関係法規担当(令和2年~)

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